『』内は福島弁、「」内は共通語
方言は共通語には無い味わいがあります。
でも今は、その方言を当地で使う人はというと60才代の人達でさえも随分と少なくなっています。おそらく50才代位までの人は日常的にほとんど使っていないと思います。
少ない中でも、自ら方言は使わなくとも三世代家族のような環境で育った人はたとえ二十才代位であっても、お爺さんやお婆さんの言っている方言が解かると言います。
現在、福島の若い人達が使う福島弁と言ったらせいぜい『~べした』や『~だべ』くらいと「馬鹿」を『ばが』など、濁音化の言葉、後は「そうだ」を『ほだ』「くらいでしょうか。
まして、言葉がすっかり変わってしまうような名詞・形容詞などの方言は知らないと思います。
まれに、進学や就職で上京などしてから『うるがす』や『こわい』と言った際、友達や同僚達の反応で方言だったことを初めて気付いたという話を聞いたことがありますが・・・。それぞれ「水に浸して水分を含ませる」と「疲れる」という意味です。
若者にわざと①『あぐど』や②『たれか』、③『めど』などと使ったりすると、「何ぁに?今、何て言ったのですか?」と言われてしまいます。
それぞれの意味は順に①「踵【かかと】」②「怠け・怠け者」③「穴」です。
私も自称、福島弁の探究家ですが、上に挙げたような方言はまず無意識には使いません。
忘れていた福島弁を思い出した時、或るいは他人が話しているのを聞いたりした時、忘れてしまわないうちに即書けるようにと、常に手帳を今も肌身離さず持っています。
病院、特に高齢者が多い整形外科などは福島弁の宝庫?です。
『なんでこらったい?』→「ここ(病院)までどういう手段で来たの?」
『孫の車でおぐってけらっちゃの』→「孫の車で送って(乗せて)もらったの」
『いいごどぉー。おらいの孫はでそぐねでわがんね』→「いい(うらやましい)ねー。 うち(我が家)の孫は出来そこないでダメなの」
いかがです?会話を聞いていると待合室でたとえ1時間位待たされたとしてもメモを取るのに夢中で、そんなに待たされたという感覚がありません。
五十~六十才代の人がまれに本格派?の福島弁を使って話していたりすると「あの人、福島弁丸出しだぁ」と、この地でも囁かれてしまうのが現実です。
福島弁っていいのにね!
方言には、何通りかの意味が含まれているものがたくさんあります。
『もごせ』という方言は①「可愛【かわい】そう」という意味と、全く反対の②「可愛【かわい】い」という意味もあります。
①の使い方:『おしんはなんてもごせこどもだったんだべ』と言うと「おしんはなんと可愛そうな子供だったのでしょう」となります。
②の使い方:お母さんに抱っこされている赤ちゃんを見た他所の人が『なんてもごせおんぼこだべ』と言ったら、この場合は「なんと可愛い赤ちゃんでしょう」という意味になります。
その場の状況で福島弁を使ったり聞いたりしている人は、どちらの意味なのかを判断していることになります。
『わがんね』という方言もそうです。
これは共通語と同じ①「分からない・解らない」という意味と、②「ダメだ」という二つの意味に使われています。
①の使い方:宿題をしていて『わがんね』と言ったら、この問題は「わからない」となります。
②の使い方:勧誘などされて『わがんね』又は『わがんねわがんね』と言えば「ダメよ」と断りの意味になります。
更に、『ぞうさね』も「造作無い」又は「造作も無い」からきており
共通語でその意味は①「手間がかからない・簡単である・手軽である」になりますが、別に時間や期間と一緒に用いられた場合は②「あっという間・直(す)ぐ」という意になります。
①の使い方:『わらじつぐんのぞうさねべした』→「わらじ作るの(なんか)簡単だ」
②の使い方:『あれがら三年たったのがい ぞうさねない』→「あれから三年経ったの? あっと言う間だね」
方言には、古語がたくさん生きている!
①福島弁の『なす』は「産む」と「返す・帳消し」という二つの意味がありますが、それぞれ、古語の「生【な】す」と、「済【な】す」からきており古い言葉がそのまま語り継がれています。
②又、「弁償する・償う」という意味の『まよう』は上記①の『なす』→「返す」と同意語です。この『まよう』も古語「まどう【償ふ】」からきているようです。
③『おどがい』は「顎【あご】」のことで、古語「おとがひ」の濁音化したもの。
④『たれひ』は「つらら」のことで、古語の「たるひ【垂氷】」からきています。
⑤『あまだ』は「大勢・たくさん」で、古語の「あまた」の濁音化したもの。
⑥『かづける』は「他人のせいにする・責任を転嫁する」の意味で、古語の「かこつ(託つ)」、 「かこつける」:人の所為にするからきています。
調べれば、この他にもたくさんあると思います。
それと、
共通語には置き換えられないような方言もあります。
『そそっぽい』というのは、直訳すると「粗粗(そそ)らしい」となってしまいますが、意味はそうではありません。『そそっぽい』など<<この他にも、とっておきの方言があるのですがまだ暫くは内緒です>>はズバリ共通語に置き換えられる言葉はないと思います。
ではどういう意味ですかと聞かれた時「いがらっぽいとは全然違い、食感がなめらかではなくパサパサしており、一般に粗(あら)くて水分が少なく飲み込めないような食べ物を指してます」と長々とそんなふうに言う訳にはいきませんよね。
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それでは、次に福島弁の特徴のいくつかをあげてみます。
語尾の『べ(ぺ』や『べした(ぺした』
「~だろう」や「~でしょう」は『べ(ぺ)』、『べした(ぺした)』となる。
例:「あちらは恐らく雨だろう」→『あっちはおそらぐ雨だべ』、「昨日そちらはは雨でしたでしょう」→『昨日そっちは雨だったんだべした』
か行・さ行・た行の濁音化
か行・さ行・た行がつく言葉はほとんどが濁音化する。
例:「柿」→『かぎ』、「砂糖」→『さどう』、「抱きつく」→『だぎづぐ』
格助詞「に」、「へ」、「の」、「を」の言い変え
①「に」や「へ」は『さ』に言い変わる。 例:「どこにあるの?」→『どごさあんの?』、「向こうへ行こう」→『むごうさいんぺ』
②「の」は『がな』、『がん』に言い変わる。
例:「俺の靴だ」→『俺がなの靴だ』、「誰のだ?」→『誰がんだ?』
③「を」は『とこ』、『どこ』に言い変わる。
例:「俺を連れて行け」→『おらんとこ連れてげ』、『おらどご連れてけ』
形容詞の語尾に付く『しょ』や『ない』などの丁寧語
「ください」、「くださいね」は『らんしょ』や『らんしょない』になる。
例:「寄ってください」→『よらんしょ』、「寄ってくださいね」→『よらんしょない』
語尾に付く否定語
①「~かない」→『がね』
例:「開かない」→『あがね』、「追いつかない」→『おっつがね』
②「~けない」→『がんに』
例:「歩けない」→『あるがんに』、「泳げない」→『およがんに』
③「~くない」→『ぐね』
例:「旨くない」→『うまぐね』、「軽くない」→『かるぐね』
④「~せない」→『さんに』
例:「追い越せない」→『おいこさんに』、「追い越せない」→『のっこさんに』
⑤「~ないで」→『な』
例:「しないで」→『すんな』、「来ないで」→『くんな』、「見ないで」→『みんな』
⑥「~ない」→『ね』
例:「食べない」→『くわね』、「聞こえない」→『きこえね』、「寝ない」→『ねね』
⑦「~べない」→『ばんに』
例:「遊べない」→『あそばんに』、「飛べない」→『とばんに』、「喜べない・喜ぶことができない」→『よろこばんに』
⑧「~られない」→『らんに』
例:「居られない」→『いらんに』、「売られない」→『うらんに』
⑨「~わない」→『わね』
例:「洗わない」→『あらわね』、「歌わない」→『うだわね』
⑩「~らない」→『んに』
例:「知らない」→『しんに』、「足らない」→『たんに』
⑪「~らない」→『んね』
例:「怒らない」→『おごんね』、「喋らない」→『しゃべんね』
形容詞の語気を強める接頭語
①『おっ』
例:「折る」→『おっきょる』、「紛失する」→『おっぽろう(”ほろう”に”おっ”を付ける)』
②『ひっ』
例:「抜く」→『ひっこぬぐ』、「破【やぶ】く」→『ひっつぁぐ』
③『ひん』
例:「曲げる」→『ひんまげる』
④『ぶっ』
例:「立てかける」→『ぶっかげる』、「破【やぶ】る」→『ぶっつあぐ』
⑤『ふん』
例:「踏む」→『ふんのぼる』
⑥『ぶん』
例:「廻す」→『ぶんまわす』
形容詞の接尾語『こい・っこい』や『ぽい』、『こ・っこ』
①『こい・っこい』
例:「細い」→『ほそこい』、「小さい」→『ちゃっこい』:『こい』は「濃い」の接尾語化。
②『ぽい』
例:「厚い・厚手」→『あつぽい』、「まぶしい」→『まつぽい』:名詞や動詞などに付いて、~を多く含んでいるという意味。
③『こ・っこ』
例:「男の子」→『やろこ』、「馬」→『うまっこ』、「甘えん坊」→『あまっこ』:名詞と形容詞に付いて、小さいという意を表したり、親愛の気持ちを示したりする。
訛(なま)り①「い」を「え」と混同する
「家(いえ)」を『ええ』、「良い【いい】から」は『ええがら』、「サティ」は『サテエー』、「D」と「Day」は『デエー』、「J(ジェィ)」を『ジー(Gと同じ発音)』、「ET」は『エーテー』、「LED」は『エルエーデー』
訛(なま)り②「じ」は「ぜ」になる
「JA」は『ゼーエー』、「JR」が『ゼーアール』
訛(なま)り③「じ」「ず」「づ」「ぢ」の混同
「どろんこになる土(つち)」は『でろ(泥(どろ)のつづ』、「県知事(ちじ)」は『県つづ』又は『県ちぢ』
助動『ち』、『ちゃ』、『ちる』
「~れて」は『ち』になる
例:「入れて」→『いっち』 、「言われて」→『ゆわっち』
「~れた」は『ちゃ』
例:「くれた」→『くっちゃ』 、「疲れた」→『つかっちゃ』
「~ている」は『ちる』
例:「怒られている」→『おごらっちる』 、「疲れている」→『つかっちる』
『~は』又は『~はぁ』
福島弁特有の方言で形容詞の接尾語「もう~」という意。
例:「もう行けったら」→『いぎなは』、「もう寝ます」→『ねるはぁ』
『~した』又は『~したぁ』
これも福島弁特有の方言で形容詞の接尾語「~だなぁ」という意。
例:「混んでいるんだなぁ」→『こんでるした・又は、こんでるしたぁ』、「狭いんだなぁ」→『せまいした又は、せまいしたぁ』
名詞や役職名などに付ける『さま』
名詞や役職名などに付けて畏敬【いけい】や敬意を表す『さま』
例:「雷【かみなり】」→『らいさま』、「蚕【かいこ】」→『かいこさま・かいごさま』、「医者」→『いしゃさま』、「大工・番匠」→『だいくさま』、「母」→『おっかさま』、「なこうど【仲人】」→『ごしなんさま』